【みんなが選んだルパン第1位】さらば愛しきルパンを「宮崎駿監督作品」超絶レビュー 

スタジオジブリ

2021年10月にアニメ化50周年を迎えるルパン三世、日本テレビ金曜ロードショー人気投票「あなたが今一番見たいルパン三世」の受付が2021年8月30日で受付を終了、9月17日に結果が発表されました。

テレビシリーズは全276話の中から得票数上位4話、、テレビスペシャルは全27作の中から最多得票の作品を、2週連続で放送することが決定しました。

人気投票の結果は!
テレビシリーズ10月15日(金)放送
【第1位】PART2・第155話(最終回)『さらば愛しきルパンよ』(1980年)
【第2位】PART1・第1話『ルパンは燃えているか・・・・⁈』(1971年)
【第3位】PART5・第24話(最終回)『ルパン三世は永遠に』(2018年)
【第4位】PART2・第145話『死の翼アルバトロス』(1980年)

テレビスペシャル
10月22日(金)放送
【第1位】第9作『ルパン三世 ワルサーP38』(1997年)

テレビシリーズ第1位『さらば愛しきルパンよ』・第4位『死の翼アルバトロス』は宮崎駿監督(照樹務名義)が演出しています。
また、『さらば愛しきルパンよ』のヒロイン小山田マキの声は『カリオストロの城』のクラリス役や『風の谷のナウシカ』のナウシカ役の島本須美が声を充てています。

今回、ルパン三世50周年で思わず脚光を浴びる事となった宮崎駿演出ルパンを改めて視聴し考察していこうと思います。
まずは、このアニメが製作された頃の年表を引いています。

1968年 『太陽の王子 ホルスの大冒』画面設計・原画
1972年 『パンダコパンダ』原案・脚本・画面設定・原画
1974年 『アルプスの少女ハイジ』場面設定・画面構成
1978年 『未来少年コナン』
1979年 『ルパン三世カリオストロの城』
【本作】 1980年『さらば愛しきルパンよ』(照樹務名義)
1984年 『風の谷のナウシカ』
1986年 『天空の城ラピュタ』

丁度、カリストロの城、ナウシカの間で製作されています。
名作のカリオストロの城が興行的に失敗し、もうアニメ映画の監督生命は絶たれるかもしれないという大変な時期に演出したのがこの作品。
※カリオストロの城は上映劇場も少なく、世はSFブームでSFでなかればヒットは難しといった時代でした。
作品自体のクオリティは高いものカリオストロがヒットしなかった理由として、そんな時代に中世の城がモチーフになっているアニメは厳しかったと評論されています。

まず、本作のヒロインに起用された声優 島本須美。
改めて本作を見直して、気が付いたんですが前半(Aパート)ナウシカ・後半(Bパート)クラリスの影がシーンと連動して脳裏をかすめていきます。
ジブリヒット作と同じ声優が起用されている事で、より本作をジブリ映画を連想させる物としています。

動画は「アニメ―ジュとジブリ展」島本須美のインタビューシーン(かなりお茶目な方ですね。)

 

この作品、子供の頃に見て凄く印象に残っているんですが、当時小学生だった私はこの作品を見ていい知れる違和感を感じました。
表面上のお話はハッピーエンドで終わりますが、終始暗いイメージが付きまとって離れません。
これは、いった何なんだ?
当時の私には理解不能でしたが、今回作品を見たり宮崎駿の発言をひらっていくにつれそのモヤモヤが晴れていきました。

物語の感想の前に話は逸れますが、今回この作品を見るにあたってブルーレイディスクをレンタルしました。
それがとんでもなく凄かったので、ちょっとだけBD盤視聴レビューを挟ませて下さい。

オーディオメニューが用意されていますが、

なんと、DTS-HD MasterAudio5.1ch、5.1chドルビーTrueHDという豪華な音声ソースで収録されています。
あまりに予想外・・・・。

部屋中を回るサウンド感!
センタースピーカーからの名良な台詞。
このサウンド感だけで、お腹いっぱいになりました。
ちなみに低音は抑え気味なので、音量を上げても快適に視聴できました。

映像も昔テレビで見たのと全く違う、、
当たり前かもしれませんが、ソースがデジタル化されたとうのもありますが、
それ以上にこれリマスターされていると思います。
映像も非常に綺麗で細部まで非常に鮮明に見る事が出来ます。

このBDソフトを企画した方、只者では無いです。
完全にツボを押さえています。
もう、テレビシーリーズを一挙に劇場クオリティに引き上げています。
ゲオのオンラインレンタルで借りられるので、ぜひBD視聴してみて下さい。

※《注意》以下ネタバレを含みます。本作を未見の方はご注意下さい。
※以下、本作を視聴された事がある方が読む前提で考察していきます。

話を元に戻します。
この話に暗さを感じる原因。
お話の2層構造になっており、それぞれのテーマが暗い物を扱っているのです。

表面のテーマ「反戦」
これにつては、ストーリーを追っていけばそのままですね。
ロボット兵器ラムダをを開発した企業が、それを世界に売り込んでいく為に実戦で街を破壊する企業組織。それを阻止する為に立ち上がったロボット開発者の娘。
その阻止に協力する事となるルパン一味。
作中では、ロボット兵が大量に投入されてる戦争シーンも出てきます。
(このテーマについては宮崎駿の発言もあります。)

「おおげさに言えば、未来への不吉な予言、というつもりで作りました」

「この作品が、新ルパン・シリーズの最終話ということで、いろいろ考え悩みました。
ボクは、ルパンのいなくなった日本または世界が危険な方向へ進んでいくんじゃないかと、心配してるんです。

ぞっとするような悪が、軍事力と結びつくんじゃないかと。軍靴の音が聞こえてくるんです。
だから、この作品は未来への不吉な予言、というつもりで作りました。

裏テーマ「新ルパン」の否定
物語の大部分を占めているのは偽ルパンの活躍。
本物ルパンの登場時間は、1/3程度です。

そして、偽ルパンがやっている強盗や街の破壊は本編でルパンがやっていた事じゃないでしょうか?
何だかんだ言って、盗みの為に誰かの犠牲を伴っている。
それを見ている時間が本編の2/3です。

これは、例えハッピーエンドを迎えたとして後味が悪い。
何かひっかかる理由がここにあります。

以下、宮崎駿の発言です。

「もうこれ以上、ルパンとかかわることはないだろうと思い、いままでのルパンは全部ニセモノだたというようなトッピな話にしたんです
が、かえってヒンシュクを買ってしまいました。」(講演「ルパン三世との関わり」より)

そして、エンディングをやりすぎちゃって後悔するような発言もあります。

「ルパン達だけでやれたと思うんです。ホントに。ニセルパン出さなくても出来たんです。でも、なんか今までやってきて、、こう「クソーッ」って思ってた部分がね、それでつい、ああいう馬鹿な事やってしまったんです。よくなかったと思ってる」(LUPAN THE THIRD VOL2より)

このような後悔発言もありますが、この作品が心にグサリを何かを残すのは、宮崎駿の新ルパン三世への複雑な想いが詰まっているからだと思います。

以下絵コンテにつては、
ルパン三世 死の翼アルバトロス・さらば愛しきルパンよ (スタジオジブリ絵コンテ全集第2期)
モンキーパンチ (著), トムスエンタテインメント (著), キョクイチ= (著), 宮崎 駿 より引用

 

本物のルパンが登場し偽ルパンを睨むシーン。
(289カット)指示に『ルパン アップ すごみ!』と指定されていますが、
この時のルパンの顔は本当に尋常じゃないほどの眼力を持っています。

私はこの時のルパンは「新ルパン」を消しに来た宮崎駿本人ではなかろうかと考えています。
偽物ルパンとの対峙とは言え、ここまでの覚悟を持っている本物ルパン(宮崎駿)。
そう考えると先の言動のじつつまがあってきます。

導入部では、盗みや破壊が偽ルパンの仕業と分からないように作られています。
絵コンテでは、途中で偽物とわかるように顔を書くよう指示が入ります。
つまり、それまでの行為も「新ルパンシーリーズ」でルパンが行ってきた事という印象を視聴者に与えるように作られています。

さらに深読みをすれば、物語で最も格好よくジンとくるシーン。
銭形に変装していたルパンが小山田マキを助けに来た時の笑顔。
そして、素直に返事をするマキ。

マキを演じるのは、島本須美(カリオストロの城でヒロインクラリス役)。

この時、ルパンシリーズの中で宮崎駿は不運にもヒットに恵まれなかったクラリスを救いきたんじゃないかとさえ思えました。

小山田マキというキャラクターは、前半ロボット兵を操縦している時のコクピットではナウシカのようであり、後半では言動や清楚さなどクラリスと酷似しています。

そう、この物語は戦争へのアンチテーゼであるとも共に、新ルパン殺しの物語!?
もう、心のモヤモヤを解決する為には、こう考えるしかないです。

だって、エンディングは完全に『カリオストロの城』のセルフオマージュ。
台詞はこうです。
銭形「して、きやつは」
マキ「もう、あの方はいってしまいました。」

マキ「約束してくれました。また、会えるって、必ず会いに来てくれるって」

『映画カリオストロの城』でのクラリス最終登場シーンの台詞。

ルパン三世 カリオストロの城 スタジオジブリ絵コンテ全集第II期 宮崎 駿 (著)より引用

内容:はじめてルパンの名を口にする。悲しみの中にも達成感がある
クラリス台詞『ルパン・・・きっと きっと 又、あえるわ』

そう、ルパンからのアンサーじゃないですかこれ!?

クラリス台詞『ルパン・・・きっと きっと 又、あえるわ』
マキ台詞『約束してくれました。また、会えるって、必ず会いに来てくれるって』

そう、クラリスへの返答をしているのです。

それでも、僕達視聴者は希望を見出す!
中盤のロボット兵ラムダを発見する長いパン。
カメラは上から下へパンされ、ロボット兵のところで速度を落としつつ更に下にいった所で、上にパン。
ロボット兵を捉えます。

そして、後半のカット。
闇夜の空から下へパン。
壊れたロボット兵、そこに座るルパン。
連続するシーンではありませんが、同じようカメラワーク。

一連の連続した流れを感じさられます。
天才宮崎駿が意味もなく同じようなカット割りを使うはずがない。

繋げてしまえば、再生を暗示するシーンになります。
最高のカメラワーク、カット割りをありがとうございます。
ゾクゾクします!

この作品が地上波で放送される事、人気投票1位である事の重大さを改めて考えています。

10月15日金曜日の放送で同時間帯で、多くの方がこの作品を見るお祭りが楽しみでなりません。
当日はSNSでの盛り上がりも期待しています。

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