2025年10月15日、ついに待ちに待ったレコードが発売されました!
(感無量です…)
20周年記念盤として初めてアナログ化されたときは、手に入れることができず、いつのまにかプレミア価格に。
それが今回、定価で再び購入できるなんて…本当に夢のようです。
僕がサニーディ・サービスと出会ったのは1995年。渋谷HMVで大きくプッシュされていたあの頃、ジャケットのインパクトに一目惚れして手に取った――それが最初の出会いでした。
当時は、まさに“渋谷系”全盛期。
フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイヴ、ラブ・タンバリンズ、スチャダラパー、東京スカパラダイスオーケストラ…。
個性豊かなアーティストたちが街の空気を彩っていた時代です。
インターネットも普及していなければ、YouTubeも存在しない。
情報は雑誌や中古レコード店(ユニオンレコード、レコファンなど)から得て、渋谷の街を歩きながらレコードを掘る――そんな“手触りのある音楽体験”が日常にありました。
まさに口コミ的な音楽の世界。中心はやはり、渋谷でした。
そして1995年――
僕が運命的に出会ってしまったアルバムが、サニーディ・サービスの『若者たち』です。
聴いた瞬間、部屋の空気が一変しました。
まるで昭和の世界にタイムスリップしたような感覚。
日本語ロックの代名詞・はっぴいえんどを彷彿とさせるサウンドに、当時の“平成の空気”が溶け合っていた。
懐かしさと新しさが共存する、不思議な温度を持ったアルバムでした。
街の記憶とともに響く音
「若者たち」は、ただのロックではなく、都市の情景が音に刻まれた作品です。
「都会の片隅にある寂しさ」や「夕暮れの切なさ」をこんなにも瑞々しく描いたアルバムは、他にそう多くはありません。
当時、渋谷のセンター街から宇田川町を抜け、道玄坂を登ってタワレコまで歩く――
そんな日常の風景が、このアルバムを聴くたびに蘇ります。
若者たちの声、恋の残り香、街のざわめき。
僕にとっては、あの頃の東京の匂いが、この1枚の中に閉じ込められているのです。
そして、2025年の今
30年近くの時を経て、再びアナログ盤で手にした『若者たち』。
レコードプレーヤーに針を落とす瞬間、あの頃の自分がふっと隣に戻ってくる。
音の温かみとともに、青春のざらついた記憶が蘇るのです。
やっぱり、レコードは“時間”を再生してくれる。
そんな風に思わされる一枚でした。
🎙 再発盤の仕様レビュー編 — 2025年盤の魅力
今回の2025年再発盤は、単なる復刻ではない。
細部にまで“愛”を感じる仕上がりになっている。
ジャケット
オリジナルの質感を忠実に再現しつつ、印刷はより高精細に。
マット紙の手触りと発色のバランスが絶妙で、
まさに“あの頃の空気”を手の中で再現しているよう。
帯には当時のキャッチコピーが再現されており、往年のファンにはたまらない仕様だ。
盤質・音質
重量盤仕様。針を落とした瞬間の“サーッ”というノイズすら愛おしい。
リマスタリングによって低音域がしっかりと支えられ、
アコースティックギターの弦の震えや、
ドラムのブラシの柔らかさまでが鮮やかに浮かび上がる。
デジタル配信で聴く音よりも、立体的で温度を感じる音像だ。
ライナーノーツ
手書きの歌詞が印刷されています。
アーティストをリアルに感じる事が出来ます。
総評
『若者たち』という作品は、聴くたびに“今”の自分の青春を更新してくれる。
そして、今回の再発盤は“記憶の中の音楽”を“現実に戻してくれる”ような存在だった。
手に取った瞬間から、過去と現在が静かに交わる――
そんな奇跡を感じられる1枚。
🎵 番外編:渋谷音楽シーンを振り返る 1995
――フリッパーズの残響と、タワレコのネオンの下で
1995年の渋谷。
まだスマートフォンもSNSも存在しない。
街の真ん中には、“音楽が流れる場所”が確かにあった。
✨ タワレコとHMVが“聖地”だった時代
公園通りを上がっていくと見えてくる、渋谷タワーレコードの黄色い看板。
その向かいには、HMV渋谷。
どちらの店も、当時の若者にとっては「最新カルチャーの発信基地」だった。
CDがずらりと並び、試聴機のヘッドフォンから流れるのは、
ピチカート・ファイヴの軽やかなリズム、コーネリアスの実験的サウンド、
スチャダラパーのゆるいビート、そして――サニーディ・サービスの穏やかな風。
雑誌『CUTiE』『relax』『switch』を片手に、
“次に聴く一枚”を探して歩く時間そのものが、カルチャー体験だった。
🛹 レコードショップ文化と「掘る」楽しみ
当時の渋谷には、まだ無数の小さなレコード屋が点在していた。
ユニオンレコード、レコファン、CISCO、DMR、WAVE(渋谷公園通り)。
それぞれに得意ジャンルがあり、店員の好みもはっきりしていた。
「今日はどこを回る?」
それだけで一日が終わるほど、渋谷は“音楽の迷宮”だった。
輸入盤コーナーの試聴CDには、ポストイットで手書きコメント。
「泣けます」「この曲のベースが最高」「ジャケ買い推奨!」――
その一言がきっかけで、人生の一本の針が動く。
今のようにアルゴリズムが選んでくれるわけじゃない。
“人の熱”と“偶然の出会い”で音楽と繋がっていた。
🏙 渋谷系という風
“渋谷系”と呼ばれる音楽は、単なるジャンルではなく街の空気だった。
おしゃれで、少し気取っていて、でもどこか憂いを帯びている。
それは、当時の東京が抱えていた“成熟しきれない若さ”そのものだった。
フリッパーズ・ギターが解散し、
小沢健二が“今夜はブギー・バック”でポップに舞い戻る。
野宮真貴率いるピチカート・ファイヴが海外で人気を博し、
渋谷の街は「東京発のカルチャー都市」として世界から注目され始める。
そして、その熱気の片隅で――
曽我部恵一の声が、静かに鳴っていた。
煌びやかな渋谷の中で、彼だけが“郷愁”を歌っていた。
それが、サニーディ・サービスだった。
☕️ カフェ文化と夜の渋谷
センター街の喧騒を抜け、道玄坂を少し登ると現れる小さなカフェ。
照明は暗く、BGMはジャズやボサノヴァ。
スピーカーのそばで流れるのは、スチャダラパーとオザケンが共演した曲。
夜の渋谷は、“踊る”街ではなく“語る”街だった。
音楽の話、恋の話、将来の話――
終電を逃したあの夜、若者たちは音楽を通して自分を見つけようとしていた。
🌇 そして今、僕らは
時代は変わり、音楽はストリーミングで瞬時に届く。
けれど、あの頃の渋谷が持っていた“空気の温度”だけは、
いまだにどこかで鳴っている気がする。
『若者たち』をアナログで聴くと、
95年の渋谷の街の音が――遠くで確かに聴こえるのだ。
🕯 終わりに
あの頃の僕らは、未来を知らなかった。
けれど、音楽だけは確かに“未来”を鳴らしていた。
その音が、今もこうしてレコードの溝から立ち上がる。
渋谷という街が、永遠のB面を再生してくれている。
🔗 参考になるプレイリスト
タイトル | 概要 | リンク |
---|---|---|
The Sound of Shibuya-Kei | 渋谷系の名曲を中心に選曲された定番プレイリスト Spotify | https://open.spotify.com/playlist/7sFEcvv5RLUs1DECRJDKRI |
Shibuya-kei (90’s Japanese Indie Pop) | 90年代インディーポップを軸にしたセレクト Spotify | https://open.spotify.com/user/1239866787/playlist/04eANjeogtG3A07QNXTlUc?influencer=24c2f4b3d0f0c57a94091f82c0f94710&internid=07d11718f41ce751183d045c5d701996&lf= |
渋谷系上位時代 | 渋谷系黄金期を象徴する曲を集めたコンパイル Spotify | https://open.spotify.com/playlist/2XR3MOImr7lnTDpPOISELw |
Shibuya-Kei | 最新の「渋谷系風味」を含めた選曲も混じるプレイリスト Spotify | https://open.spotify.com/playlist/0l2a7yXItA1OjpAdU6TG76 |
Tower Records Shibuya | “タワレコで流れていた感じ”を意識したミックス | https://open.spotify.com/playlist/0YowAHFJrAmToW4zJtjju1 Spotify |