先日、千と千尋の神隠しの原案となった児童文学「霧のむこうのふしぎな町」を読みました。
夏休みに不思議の街(魔法使いの街)に迷いこんだ女の子がそこで働き成長し現実世界帰るという物語。
ピピティ・ピコットというお婆さんの下宿(ピコット屋敷)で生活をしながら街の住人が営むお店を手伝って回るという構成です。
この本を読んでいる最中、ピコット婆さんの姿は湯婆婆に脳内変換されていました。
このお話での設定でピコット婆さんは、意地悪で一本筋の通ったところあり、主人公の女の子(リナ)に目をかけています。
リナも薄々それに気づいており、最後の別れの章でリナは心を通わせた不思議の街の住人、そしてピコット婆さんとの別れを惜しみます。
千と千尋の神隠しの湯婆婆もハクを捨てるという冷酷な一面と共に、悪人では無く一本筋を持っています。
そう、今回は筋のブレない経営を続け油屋の数多の従業員を従える、経営者としての湯婆婆を考察していこうと思います。
曲げない経営方針・寛大な採用方式
湯婆婆は仕事を求める物には仕事を与えるという誓いを立てています。
つまらない誓いをたてちまったもんだよ
働きたい者には仕事をやるだなんて
これ以上ごくつぶしを増やしてどうしろと言うんだい
千尋の事は役にたつ可能性が低く、雇いたくないというのがこの時に湯婆婆の本音だと思います。
しかし、結局は誓いを破らずに千尋を雇用する事となります。
見込みが薄い中で理念に従って採用する寛容さも持ち合わせています。
また、余剰人員を抱えてもやっていける内部留保も持ち合わせいる事が伺えます。
勿論、リストラや早期退職を募る事はないでしょう。
かなりの敏腕経営者だからこそなせる技です。
良い仕事をすれば褒める!成果を分ける!
オクサレ様という酷い匂いの神様が油屋を訪問した際に、千尋に対応を任せませます。
新人にいきなり難しい仕事を任せるのは、ある種嫌がらせにも思える対応です。
ですが、この時は千尋を試したのではないでしょうか?
何か問題が発生した時に最終責任を負うのは、経営者である湯婆婆です。
この決断は経営者にもリスクを伴せます。
そして、オクサレ様と思われていた神の正体は名のある川の主で油屋は砂金を受け取る事となり、
千尋はチップとして、川の主から貴重な草だんごを貰います。
この時、いの一番に千尋を抱きしめたのは湯婆婆です。
従業員の成果を徹底的に褒める姿勢。
また、この日は「一本付けるよ」と酒や特別な食事が振舞われます。
成果を即時に分かち合う、行動の早さも凄いです。
問題客への対応、商売より従業員を守る。
カオナシが暴走し油屋をめちゃくちゃにし、千尋を追いかけ回すと一転。
みななお退き!
お客様とて許せぬ!
カオナシに魔法の光玉を当てようとします。
衣食住付き
制服は支給され、従業員の宿所が付き、食事も賄われています。
残業なし!
出退勤は札で管理されており、残業もありません。
例え誰であろうと働く意思のある人を雇用し、盤石な財務体制を築き、従業員守り育てる。
不思議の街を後にするエンディング、湯婆婆は成長した千尋を返したくなかった事でしょう。
難癖つければ、どうにでもなったと思います。
それでも、儀式に乗っ取り返す事にします。
人情味あふれる決断。
それは、湯婆婆の魅力であり、油屋をひっぱって行く事のできる力になっています。
そして、物語としては「霧のむこうのふしぎな町」のピコット婆さんとリナの関係を踏襲する部分かと思います。