以前、この「徳島市東部タウンマップ」でも、南沖洲にある南海フェリー徳島港を紹介しました。
徳島から和歌山へ。車のまま船に乗って、海を渡って関西へ行く。徳島市東部に住んでいると、港にフェリーがいる風景は、どこか当たり前のものになっています。

実際にこちらの記事では、徳島港の乗り場やフェリーの様子を紹介しています。
また、実際に南海フェリーを使って大阪・関西万博へ行った時の様子も記事にしています。
普段は、こうして関西へ出掛けるための便利な交通手段として使っている南海フェリー。
でも、その南海フェリーは現在、2028年3月末を目途にフェリー事業から撤退する方針を示しています。
利用者数の問題、船の更新費用、乗組員不足。民間企業ですから、経営上の事情があることも理解できます。
ですから今回は、「何が何でも南海フェリーを残すべきだ」という話をしたいわけではありません。
ただ、なくなってしまう前に、一つだけみんなで考えておいた方がいいことがあるように思います。
「もし南海トラフ巨大地震が起きた時、徳島へ物資をどうやって運ぶのだろう?」
今回は、そんな視点から南海フェリーについて考えてみたいと思います。
南海フェリーは、ただの「移動手段」ではありません
南海フェリーというと、和歌山へ遊びに行く、関西方面へ車で出掛ける、そんなイメージが強いと思います。
でも調べてみると、もう一つ大切な役割がありました。
徳島県と南海フェリーは、「船舶による災害時の輸送等に関する基本協定」を結んでいます。
大規模な地震などが発生した際には、被災した方、食料や生活必需品、災害対応に必要な人員、復旧に必要な資機材などを、船で輸送することが想定されています。
つまり南海フェリーは、普段は人や車を運ぶ船ですが、いざという時には本州から徳島へ物資を運ぶ「海の道」にもなるわけです。

しかも、徳島県の防災計画にも名前があります
ここは、今回調べていて少し驚いたところです。
2026年3月に修正された徳島県地域防災計画を見ると、「船舶による生活必需品等の輸送等」の協定先として、南海フェリー株式会社の名前がきちんと記載されています。
もちろん南海フェリーだけではありません。日本内航海運組合総連合会やオーシャントランスなど、複数の事業者が想定されています。
それでも、南海フェリーは単に「災害の時に使えたら便利そうな船」という存在ではありません。
徳島県自身が、災害時の輸送手段の一つとして正式に防災計画の中へ組み込んでいます。これは大切なポイントだと思います。
南海フェリーがなくなるなら、防災計画の方も考え直す必要があります
もちろん、南海フェリーがなくなったからといって、徳島への海上輸送が全部なくなるわけではありません。
他のフェリーや内航船がありますし、自衛隊や海上保安庁による支援もあります。いろいろな手段を組み合わせることができます。
だからこそ、南海フェリーがなくなるのであれば、これまで防災計画の中にあった一つの輸送手段を、「では、何で補うのか」まで考えておいてほしいところです。
どの船を使うのか。何台くらいトラックを運べるのか。どこの岸壁を使うのか。大きな災害が起きた時にも、その船を本当に確保できるのか。どのくらいの時間で動き始められるのか。
そこまで準備されて初めて、安心して「別の輸送手段があります」と言えるのではないでしょうか。
災害が起きてから船を探すのは、意外と簡単ではありません
船なら何でも同じ港に入れるわけではありません。
船の大きさがあり、必要な水深があり、岸壁の長さがあります。大型トラックを積み降ろしするための設備も必要です。
国土交通省が南海トラフ地震に備えて作っている四国の海上輸送計画でも、フェリーと岸壁が実際に使える組み合わせなのか、事前に確認しておくことが重要とされています。
つまり、災害が起きてから「どこかに使える船はありませんか?」と探せば終わるほど簡単な話でもなさそうです。
さらに南海トラフ巨大地震では、徳島だけが被災するわけではありません。高知や和歌山、三重、愛知、静岡、宮崎など、非常に広い地域が同時に被害を受ける可能性があります。
当然、船を必要とする地域も徳島だけではありません。
その時になって「徳島にも一隻お願いします」と言えば、すぐ船が来てくれるのか。そこは、あらかじめ考えておいた方がよさそうです。
自衛隊も大切。でも、徳島だけの災害ではありません
大きな災害になれば、自衛隊も支援してくれます。輸送艦もありますし、ヘリコプターもあります。非常に頼りになる存在です。
ただ、南海トラフ巨大地震では、被災するのは徳島だけではありません。自衛隊も全国各地へ分散して活動することになります。
そして自衛隊には、人命救助、孤立した地域への支援、医療搬送、道路の啓開、被害の大きな地域への緊急展開など、自衛隊だからこそできる仕事があります。
民間の船で運べる食料や生活物資は民間が運ぶ。その分、自衛隊には本当に必要な場所で活動してもらう。
「自衛隊か民間フェリーか」ではなく、両方使える方が災害には強い。
そう考える方が自然なのではないでしょうか。
「津波が来たら徳島港も使えないのでは?」
これはその通りです。
南海トラフ巨大地震が発生すれば、徳島港自体が津波被害を受ける可能性があります。地震が起きた直後から南海フェリーが普通に運航できる、という話ではありません。
でも、道路も被災します。橋も止まる可能性があります。空港も被害を受けるかもしれません。
だから防災では、一つの方法だけに頼らないことが大切なのだと思います。
道路が使えるなら陸から。空港が使えるなら空から。そして港が使えるようになったら海から。
発災当日は使えなくても、3日後、1週間後と港の復旧が進んだ時、そこから大量の物資を運べる船がある。
その選択肢を持っておくことには、意味があると思います。
助かった次の日からも、生活は続きます
災害というと、地震が起きた瞬間や、津波から逃げる瞬間にどうしても目が向きます。
もちろん、まず命を守ることが何より大切です。
でも、助かった次の日からも生活は続きます。
水を飲みます。食事をします。薬が必要な人もいます。赤ちゃんにはミルクやおむつが必要です。高齢の方には介護用品が必要になります。
そして街を元に戻していくためには、発電機、燃料、重機、電気や水道を直すための資材、通信設備など、本当にたくさんの物が必要になります。
そのすべてを支えているのが物流です。
普段、スーパーに水が並んでいる時には、「この水はどうやって徳島まで来たんだろう」なんて、ほとんど考えません。
でも物流が止まった瞬間、そのありがたさを一気に感じることになるのだと思います。
南海フェリーを「普段何人乗っているか」だけで考えていいのでしょうか
もちろん、民間の航路ですから採算は大切です。
利用者数も大切ですし、船の更新費用や乗組員の確保も考えなければなりません。無条件に公費を投入すればいい、という話でもありません。
ただ、南海フェリーには、人を運ぶ、車を運ぶ、荷物を運ぶ、そして災害時には生活物資や復旧資材を運ぶ、いくつもの役割があります。
しかも災害時の役割については、すでに徳島県自身が地域防災計画や災害協定の中に位置付けています。
そう考えると、南海フェリーの価値は、「普段、何人が乗っているのか」だけでは測れないのかもしれません。
もし残せないのであれば、「代わり」を先に用意しておいてほしい
南海フェリーを残すことが、本当に一番良い方法なのか。そこは私には分かりません。
別の会社が航路を引き継ぐ方法もあるかもしれません。別の船会社と、災害時に確実に船を使える協定を結ぶ方法もあるでしょう。
港湾設備を含めて、新しい輸送体制を作るという方法もあると思います。
大切なのは、「海から徳島へ物を運ぶ力」を残すことなのかもしれません。
そして、その仕組みを災害が起きてからではなく、今のうちに作っておく。
南海フェリーが2028年3月末を目途に撤退するのであれば、それまでに防災計画や災害時の輸送体制についても、きちんと代わりを準備しておいてほしいと思います。
「あの時、残しておけばよかった」と思っても
今回このことを調べながら、どうしても頭から離れないことがあります。
もし、いつか本当に南海トラフ巨大地震が起きた時。
橋が止まっている。道路も一部通れない。スーパーから商品がなくなっていく。避難所に水や生活用品が足りない。復旧資材もなかなか入ってこない。
そんな状況の中で、
「あの時、フェリーを残しておけばよかったな」
と私たちが思うことです。
でも、その時にそう思っても、航路は翌日には戻ってきません。
船だけ買えばいいわけでもありません。
船員さんがいます。整備する人がいます。港を動かす人がいます。物流を動かす人たちがいます。そして、長年積み重ねてきた運航の経験があります。
一度なくなった仕組みを、大きな地震が起きた翌日に元へ戻すことはできません。
もちろん、南海フェリーを残すことだけが正解なのかは分かりません。もっと良い方法があるかもしれません。
だからこそ、なくなる前に考えておいてほしいのです。
徳島市東部だからこそ、少しだけ考えておきたい
徳島市東部には、海があります。川があります。港があります。そして、その近くにたくさんの人が暮らしています。
普段は、この水辺の風景も私たちの街の魅力です。
南海フェリーが徳島港へ入ってくる風景も、ずっとこの地域の日常の一部でした。
でも、その船が「海の道」でもあると考えると、少し違って見えてきます。
南海フェリーを残すのか。別の会社へ引き継ぐのか。別の船で災害時の輸送を確保するのか。
答えはいろいろあっていいと思います。
ただ、今あるものをなくすのであれば、いざという時の代わりまで、きちんと用意しておく。
それだけはお願いしたいところです。
災害が起きてから、
「あの時、もう少し考えておけばよかった」
と思わないために。
まだ何も起きていない今だからこそ、徳島の「海の道」について、みんなで考えてみてもいいのではないかと思います。
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